穏やかに清らかに
受け継がれる山陰吟醸
住宅街の一角、銘酒「天穏」の看板を掲げた煙突が赤瓦にそびえ立つ。「天が穏やかであれば窮することはない」という仏典の言葉「無窮天穏」から命名し、平穏な世の中への願いを込めた。
創業は明治4年、歴史ある蔵で天穏の味を造ってきた出雲杜氏の流れを受け継ぐのは杜氏の小島達也さん。愛知県出身の小島さんは酒販店でアルバイトをしていた時に日本酒の美味しさに感動し、自身の手で酒造りをしたいと思うようになったという。機械化された工場で造る酒ではなく、手造りの技術が残る酒蔵を探す中で板倉酒造に出会い、平成22年に蔵人となった。吟醸造りの名手と名を馳せた長崎芳久さんと前任者である岡田唯寛杜氏の下で4年ほど修業し、平成27年の造りから天穏の杜氏を受け継いだ。
小島さんが醸す天穏は昔からのファンはもちろん、県内外からの支持も高く、生産量は近年上り調子だという。「名前通りの穏やかな酒、飲み飽きしない、冷でも熱燗でもおいしい中庸な酒を目指しています」と話す。
酒米は県内産の五百万石、佐香錦、縁の舞、改良雄町に、大山産の山田錦と全量山陰産。自家製米で、出雲北山山系の中硬水を仕込み水に酒造りをする。酒母づくりは速醸のほか、中温速醸、高温糖化、水酛、生酛、山廃、6種類を行う。「出雲杜氏を継承する一人として、蔵人にどんどん引き継いで造り手を増やしたい」。杜氏である小島さんが新しいことを取り入れることで、蔵人たちもよりたくさんのことを経験できる。杜氏も蔵人もスキルアップしていこうという方針だ。
飲み飽きしない、人に寄り添う酒
「ここは丁寧な吟醸造りをしてきた蔵。受け継いだものを同じ価値観で造り、天穏という銘柄を造ることに注力しています」と小島さん。
酒質的なところは継承しながら、小島さんの個性で毎年より高いクオリティを目指して発展させていく。そのためには時に思い切った改革も行う。伝統を継承するのは大前提として、小島さんの個人的なテーマは「人はなぜお酒を造り、なぜ飲むのか」だという。哲学的な面からも酒に向き合い、自分の中で答えを導き出す。「それを色んな形にして表現していきたい。実際に味に反映させるのは難しいけど、今はそこを探求している感じです」と酒造りに対してどこまでも実直だ。
天穏を口に含む。舌の上で「おいしい」と感じる酒というより、飲んだ後に含み香や吟味がゆっくり鼻腔を抜ける。「味を遅らせています。一瞬で感じる旨さよりも、じんわり長時間楽しめる、飲み疲れしない酒になる。例えるならファーストフードより母の手料理、シャワーより温泉、CDより生演奏というように、瞬間的な良さよりも、幸福度が高いんです」ゆっくりと静かに語る小島さん。多方向から酒造りに切り込む若き杜氏の造る天穏は、とことん穏やかだ。
杜氏の小島達也さん
お酒を酌み交わし、同じものを飲んで同じ土地のものを食べることで人と仲良くなれる。そんな人と人を繋げられるようないいお酒を造りたいですね。
オススメの5本&マリアージュ
天穏 純米吟醸 馨(かおる)
島根県が約15年かけて開発した新たな酒米で、奥出雲で栽培された「縁の舞」を使用した純米吟醸酒。綺麗で品の良いスッキリとした辛口のキレの良い酒。冷から燗までお好みの温度帯で。
☆オススメのマリアージュ/出雲そば
天穏 純米大吟醸 佐香錦
島根県の酒造好適米「佐香錦」と島根酵母を使い、出雲杜氏の山陰吟醸造りで醸した純米大吟醸。清らかで品の良い佐香錦の味わいが人と料理に寄り添う。温度帯は冷がオススメ。
☆オススメのマリアージュ/魚料理
天穏 生酛 無濾過純米酒 改良雄町
綺麗さと滋味深さをあわせ持つ天穏の生酛造り。飾らない日本酒の本質的な滋味深い美味しさが心に余韻を届ける。冷から燗までお好みの温度帯で。
☆オススメのマリアージュ/鍋やおでんなど出汁のきいた料理にも合わせやすい
無窮天穏 生酛純米吟醸 齋香(さけ)
齋(さ)…清らか、神聖。香(け)…お供え物
「佐香錦」+「生酛」+「出雲杜氏の吟醸造り」で、天穏にできる最も清らかな酒造りを目指し挑戦した日本酒。佐香錦の飲み口の綺麗さ、品の良さに、生酛の乳酸と吟味が絡み合う。常温〜燗で噛むように味わいたい。
☆オススメのマリアージュ/創作料理、中華、フレンチ
天穏 生酛純米大吟醸 無濾過原酒 天頂(てっぺん)
山陰吟醸造りと生酛造りを融合させた天穏の酒造りの頂点。山陰吟醸の清らかさと生酛造りの深い余韻を持ち、複雑味のある味わいは食中酒というよりウィスキーのように単体でじっくりと味わいたい。温度帯は冷〜常温で、マリアージュはデザート系と合わせてみても面白い。
☆オススメのマリアージュ/スイーツ、デザート、チョコ
蔵の基本情報
訪問/見学可(要相談)・試飲可・販売あり
蔵周辺の楽しみ方
桜並木
蔵の前の通りには推定樹齢30年以上の桜並木が続きます。
詳細
名称 | 板倉酒造 |
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カテゴリー | 地酒 |
住所 | 出雲市塩冶町468 |
問い合わせ電話番号 | 0853-21-0434 |
営業時間 | 8:30 ~ 17:00 |
定休日 | 土・日・祝(12月は土曜営業) |
駐車場 | 有り |
リンク | http://www.tenon.jp/ |
クレジットカード | 可 |
交通アクセス | 出雲市駅から車5分 |