出雲観光ガイド

出西窯

しゅっさいがま

共同体がつくり出す民芸の美。多くの人たちに長く愛される出西窯の器はこうして生まれました。

住所

出雲市斐川町出西3368

問い合わせ電話番号

0853-72-0239

営業時間

9時30分~18時

定休日

毎週火曜日(祝日は開館)、元日

美意識の革命によって生まれた民芸の美

斐伊川が近くを流れるのどかな田園風景の中に窯元を構える出西窯。温かみのある日本家屋風の工房で、日々新しい器が生み出されています。

出西窯の器は飾り気のないシンプルなものが多く見られます。こだわりは「道具としての使いやすさ」。器はいずれも手に馴染み良く、陶器でありながら柔らかさや温もりを感じます。食器として主張することなく、和にも洋にも合わせられるデザイン。比較的丈夫で、普段使いの陶器と同じように使えるのも魅力です。

道具としての実用性に味わいのある美しさを兼ね備え、今日では全国に多くのファンを持つ出西窯ですが、今に至るには揺るぎない信念があったからでした。

出雲地方を流れる斐伊川

赤瓦が美しい工房

五人の青年たちが追い求めた「用の美」

写真13

昭和22年、出雲市斐川町出西で、多々納弘光、井上寿人、陰山千代吉、多々納良夫、中島空慧の5人が集まりました。当時19〜20歳の彼らは地元の幼馴染で、全員農家の次男三男。物資も食料も不足している戦後間もない時代の中、生活の手段として「何もないここから、手作りで何かできることはないか?」と考えを巡らせました。

あれこれ模索する中で、この土地の粘りの強い土が焼き物に向いているという話を聞いた彼らは陶芸に目をつけます。とはいえ、陶芸に関して知識も経験もないゼロからのスタート、まずは一から窯を作り、当時出雲市にあった工業試験場の技師に指導を頼み、手探り状態でつくり始めました。

最初は古伊万里や京焼のような美術的価値のある陶芸品を見よう見まねで作っていましたが、ある日窯を訪れた松江の工芸家の金津滋から「君たちの仕事には、美しさも志もない」との指摘を受け、民芸運動を起こした柳宗悦の本を渡されます。

方向性に迷いが生じていた彼らはその本に多大な影響を受け、同じく民芸運動を展開していた安来市出身の陶芸家、河井寛次郎に指導を懇請します。窯を訪れた河井寛次郎から指導を受け、ここで5人の価値観は大きく変わります。
さらには河井寛次郎との繋がりから柳宗悦や濱田庄司、鳥取出身の民芸運動家である吉田璋也、イギリスの陶芸家バーナード・リーチらとも交流が生まれました。民芸運動の重鎮たちからその精神を学び、彼らもまた修行に出て技術指導を受けることで確実に実力をつけていき、試行錯誤を繰り返しながら現在の出西窯のスタイルを築き上げていきました。

民藝運動とは

それまで顧みられることのなかった「日常的な暮らしの中で使う手仕事の日用品」の中に美しさ(用の美)を見いだし、活用しようという日本独自の運動。
柳宗悦を中心に陶芸家の濱田庄司や河井寛次郎らによって展開され、全国の無名の職人が作る民芸品の中に美を見出し、広く伝えるために全国各地を精力的に回る活動が行われました。民芸という言葉は民衆的工芸品の略であり、彼らによって生み出された言葉です。

道具としての器

「その器は唇に喜びがあるか?」これは多々納らに指導をした陶芸家の一人、バーナード・リーチの言葉です。例えばコーヒーカップであれば、持ちやすいのか、口にあてた時に喜びがあるか?つまりその器でどれだけコーヒーが美味しく飲めるのかが、「道具」としての価値になるという訳です。
リーチの教えを大切にするように、彼らは道具としての価値にこだわりながら器を作り続けました。たどり着いた美しいフォルムと深みのある色彩は、民芸としてはもちろん、美術的観点からも高い評価を受けるまでになりました。美を追うのではなく、実用を求めた先に美があった、まさに「用の美」という民芸運動の思想の元に生まれた器であると思わせられます。

出西窯であり続けるための共同体スタイル

出西窯であり続けるための共同体スタイル

窯主を持たず、一つ一つの工程が共同作業で作られる出西窯の器。
どんなに出西窯の名が売れても、高価になってしまっては多くの人に使ってもらえない。ここには個性を打ち出す芸術家はおらず、自分たちの作っているものはあくまでも台所の道具であるという同じ志を持った職人たちの共同作業場なのです。
苦労も困難も喜びも、共同体で分かち合った5人の青年たちの信念は大切に今に受け継がれ、18人の共同体となった今も「台所の道具」を作り続けているのです。

「私たちは台所の道具を作ってるんです」と話す多々納真現代表は、創業メンバー多々納弘光氏の長男

工房は自由に見学ができ、棚や作業道具が所狭しと並ぶ作業場の中で、職人の方たちが黙々と器を作る工程を見ることができます。
工房の東側にはレンガ造りの大きな登り窯があり、こちらも常時見学可。年に3~4回、窯焚きが行われるので、タイミングが合えば窯焚きの様子を見ることもできます。
登り窯の奥には原料場があり、器の原料となる粘土を原土から精製しています。このように土作りから窯焚きまで、全ての工程を同じ工房で行っているところは、現在では珍しくなってきました。

作業工程が見学できる工房内

工房の西隣には「無自性館」と看板が掲げられた展示販売館があります。建物は明治初期の日本家屋を移築したもので、館内で出西窯の器が購入できます。

「無自性館」では数千点が展示販売されている

「無自性」とは、哲学者山本空外師より教えられた言葉で、「衆縁に従るが故に必ず自性無し(世の中は何もかも「おかげさま」によるもので、自分の手柄などどこにもない)」という意味だそうです。

その理念に従うように、出西窯では材料となる粘土や釉薬、薪などの原料に至るまで、全て島根県産のものにこだわっています。
土地から与えられたもの、多くの人たちの支えによるもの、自分たちがこうして器造りを続けられるのは、そうした「おかげさま」があるからという強い信念がそこにあるのです。

鮮やかな瑠璃色は「出西ブルー」と呼ばれる人気色

黄昏時「出西ブルー」に染まった空

出西窯☓カフェ
ル コションドール出西

出西窯に隣接し、2018年5月にオープンしたベーカリー&カフェ。店内右側のベーカリーには約50種類の自家製酵母種のパンが並び、カフェスペースでは地域の旬の食材を生かしたメニューが出西窯の器で味わえます。

TEL 0853-27-9123
営業時間 9:30~18:00 (ランチ10:30〜14:00、フードLO.17:00、ドリンクLO.17:30)
定休日 火曜、第2.4水曜

関連サイト

詳細

名称 出西窯
住所 出雲市斐川町出西3368
問い合わせ電話番号 0853-72-0239
営業時間 9時30分~18時
定休日 毎週火曜日(祝日は開館)、元日
駐車場 有り 40台
ホームページURL http://www.shussai.jp/
交通アクセス ■鉄道でお越しの方
JR 出雲市駅よりタクシーで約10分(約6km)

■飛行機でお越しの方
出雲空港よりタクシーで約20分(約11km)

■自動車でお越しの方
山陰自動車道斐川ICより約7分(約5km)
斐川ICを下り、最初の信号を左折(看板有)し、道なりに(簸川南広域農道(通称出雲ロマン街道)~県道197号経由)まっすぐ進んでください。

国道9号より神立橋東詰交差点を南に折れ、約3分(約2km)